いつでも「モテる」ことが前提
写真家としての米原康正
増田セバスチャン - よねちゃんが若い子の写真を撮る現場に何度か同行させてもらって思ったのが、下の世代というか次の世代の人にアンテナをぴぴっと合わせるのがうまいってこと。その秘訣とかってあるの?
米原康正 - 俺は、いつでも「モテる」ってことか前提なんだよね。自分を押しつけるオトナって、どうかんがえてもモテないじゃん。写真を撮るときは、かわいく撮るとか、エロく撮るとか、そういうのもあるんだけど、基本は自分を押し付けない。当たり前なんだけど、まずは相手を認める。もし認めきれないことがあったら話を聞く。そういう会話ができる状態にいつでもしておくよね。自分も聞くし、相手にも俺の言ってることがおかしいと思ったら、「よねさん、それはおかしいっすよ」って言ってもらえるようにしてる。若者のことがわからなかったら、教えてっていうのが普通なのに、大人はだんだんわからないこともわからないって言えなくなっちゃうんだよね。知らない=仕事ができないとか、人間的にダメだと思っちゃって、わからなくても素直に聞けない。だから、会社で若い人に向けての企画を出せって言っておきながら、「わかんないな〜。俺が分かんないからダメってことだろう」なんてことを言う。「もっと今売れてるものを真似しようよ」とか、「今そういう雑誌がないってことはマーケットがないってことだよ」ってお前はバカかって(笑)なに「わかんない」ってことを価値判断にしてるんだ!って言いたくなるじゃない。
増田セバスチャン - 情報が多すぎて、どの情報を選んだらいいかわからなくなって、反対に視野が狭くなったりしてるのかもね。
米原康正 - おっさんの面白くないところってさ、情報を全部知ってなきゃいけないって思うとこなんだよね。でも、本当は自分に必要な情報さえ持ってればいいわけで。さっきの外人と自分との違いを知った上で外国文化を取り入れるって話と同じように、まずは自分を知ったうえで自分にとって必要な情報だけを吸収すればいい。俺なんてすごく偏った情報だけでできてる(笑)それでも成り立つんだっていうことは大人にも若者にも知ってもらいたいね。
世の中で、才能をどういう風に生かしていくか
アーティストとしての表現
JUGEMスタッフ - 増田さんが前回のインタビューで「表現はみてくれる人がいてこそ成り立つ」とおっしゃっていましたが、米原さんもそう思われますか?
米原康正 - うん。理想を求めるアーティストっていうのも嫌いじゃないんだけどね、でもやっぱりそれは圧倒的なすごい才能があってこそ成り立つものだと思うんだ。あくまでもアーティストっていうのは、世の中があって、そこで才能をどういう風に生かしていくかってことだと思うんだよね。自分の作品が世の中でどういうふうに見られるのか、どういう風な影響を与えるのとか、そういうことを考えるのがアーティストだと思うんだよね。何で自分の作品は理解されないんだろうって言う人が圧倒的に多くて、それは世の中知らないだけじゃんって、何逃げてんだよって思う。たくさんの人に見てもらいたいとか、それを生かしてもらいたいとか、そういうのがないんだったら、アーティストとして嘘だと思うんだよな。「評価されないなら勝手にやってます」っていう本当に才能ある人って、没後に評価されたりするじゃない。それも本人は作ってるときがたのしいからいい!って思うならそれでもいい。でも、あまりにも評価されなくて……なんて世の中のせいにしてる人が多いから、それはもう自分のせいでしょって思う。
増田セバスチャン - アーティストとして表現する人は、世にさらされて評価されるべき。そこに到達していない人は百万といると思う。そこから先に行くには、一回ぐっと世の中にさらされる覚悟をしないとね。
米原康正 - 世の中をわざわざ意識しなくても、自分を知ってれば、どうやって自分は周りと仲良くなるのかとか、自分は周りにどう思われてるのかってわかるじゃん。それは周りを知ることにもなるじゃない。とにかく自分か周りか、どちらかを追求していなくちゃいけない。自分を追及すればするほど周りとの軋轢が絶対でてくると思うのよ。そこを作品に変えていけたら、誰でもアーティストになれる気はするんだけどね。自分をとことん追及して作ったものって、万人にとっての、ある共通のイメージだったり、正反対のイメージだったり、どちらかになるはずなんだよ。個を追及してる人ってそこに到達する。到達しないのは、追及せずに適当なイメージで、アートはこういうふうにすればかっこいいじゃん、今これを描いとけばいいんだろって感じでやってるからじゃないかな。
H.U.G. vol.1「アップ!」-Xmas night-について
「米原康正」の世界観を体感!
米原康正 - 基本はクラブイベントなんだけど、そこでいつもの僕の世界観みたいなものを出せたらと思ってる。おしゃれな子が政治の話をしてもいいじゃん。真面目な話は真面目な格好してやらなきゃいけないとか、そういう日本人の「形やイメージ優先」じゃなくて、そろそろ中身を大切にしようよってことを伝えたれたらいいな。
増田セバスチャン - プロデューサーの立場からいうと、よねちゃんそのものをイベントにしたいね。よねちゃんの写真が持ってる、かわいさや艶っぽさを現わしたいのはもちろん、よねちゃんらしい面白い「語り」も織り交ぜて、よねちゃんの世界観を体感できるイベントにしたいね。
取材・写真/jugem デザイン/6%DOKIDOKI
撮影場所/CREEPS
Profile : 米原康正
雑誌「egg」「アウフォト(OUT OF PHOTOGRAPHERS)」「smart girls」を生み出したスーパー編集者。 最近では「charlotte ronson」「American Apparel」などの写真も手がけるフォトグラファーとしても活躍。 『NEW ERO』をテーマに、エロ、ファッション、アート、ストリートを縦横無尽に走り続けている。次回の"H.U.G.vol.1"は今一番脂の乗った編集者兼フォトグラファーの米原康正がプレゼンターとして登場!”ニュー・エロ”の視点から、「次世代の原宿」にどんな提案をしてくれるのか?こうご期待!